The Planets。

The Planets

久しぶりに興味をそそる国内盤を見つけました。既に何枚も持ってるホルストの「惑星」なのですが、NHK交響楽団の演奏なんです。N響って日本を代表するオケなのに、何故か出回ってる音源が少ない気がしませんか?自分が知らないだけかな・・・
指揮は多方面で活躍中の佐渡裕氏。2005年夏・東京オペラシティコンサートホールでのライヴ録音です。

近現代イギリスを代表する作曲家G.ホルストの名看板「惑星」。1917年に書き上げられた曲で、太陽系の惑星のうち地球と作曲当時まだ発見されていなかった冥王星を除く天体をそれぞれモチーフにした7曲からなる組曲です。
スコアに「for Large Orchestra」と記されている通り演奏には大編成の管弦楽を必要とし、また当時の管楽器が機能的に著しい進化を遂げたという時代的背景もあってか、バスクラリネットやバスフルート(…in Gとスコアにあるのでこれは現在のアルトフルートですね)といった主に低音域を補強する楽器から、バスオーボエやテナーチューバといった現在はほとんど使われていない楽器も用いられています。そんなオーケストレーションに加えて、特殊なリズムや和声をもふんだんに盛り込まれているのが、いかにも近代的な響きを感じさせる要因でしょうか。

さてN響の演奏ですが、巨匠バーンスタインの愛弟子である佐渡氏の棒がそうさせているのか、全体が溶け合うというよりはむしろ個々の楽器がしっかりカタチを保ったまま聞こえてくる感じ。弱奏部の木管楽器によるアンサンブルなんてのが顕著なところで、例えば絡んでるクラリネットとバスーン両方の動きがはっきり耳で追えてしまう。これはバラバラで揃っていないということではなくて、一糸乱れぬアンサンブルに優れた全体のバランス、それでいて個々の楽器の細かな動きまでもがハッキリと聴き取れるという非常に解像度の高い、ライナーノーツの言葉を借りれば「立体的で、また繊細な」サウンドなんですね。

フレージングはとても歯切れがよいです。「木星」の弦や木管に現れる細かなパッセージも中間部の有名な旋律も、音符一つ一つが手に取れるような感覚。フォルテシモの全音符からピアニシモの32分音符までに至る全ての音符に"音楽的価値"を感じさせてくれます。

…ただ「海王星」の少年少女合唱はちょっとでしゃばりすぎかな。もともとこれは舞台裏に配置された女声コーラス、決して声楽的な扱いではなくて、どこからともなく聞こえてきて最後は消え入るように鳴り止む、あくまで「効果音」みたいなもの、というのが理想だと思うのです。

でもN響の音って日本人好みだと思うんですよねー。クセがないというか聴きやすいというか、それでいてよく錬られていて飽きが来ない。

ライヴ録音に関しては好き嫌いが大きく分かれるところですが、指揮者や奏者の息遣いまでもが鮮明に聴き取れる臨場感、そして時にはアインザッツが乱れたり音が外れたりという緊張感(もちろん演奏上の「事故」は無いに越したことはないんですが、こんなのが聴けてしまうのもライヴ音源ならではってことで)。こういう要素を楽しめる人はたいがい好きなんじゃないかなー、と。ちなみに私はどっちも好きです。通常のレコーディング音源も面白いと思うし、またライヴ音源特有の「空気感」も素敵だと思います。

というわけでなかなかの名盤でした。

余談ですが今年の「N響第九」は現音楽監督V.アシュケナージの指揮。例年より早い12月第3週の公演だったそうです。録画しなきゃ…

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